マヌカハニーブームと販売の現実

2017.10.01

今日は朝から晴天に恵まれ、徐々に色んな花が咲き出している。マヌカの花蜜分泌は場所と品種によって大きく異なり、そのピークは大体クリスマス頃となる。来月ぐらいから、ベース内にある巣箱を本格的に各蜂場へ移動する予定にしている。一度に多くの移動ではなく、各群れを慎重に点検した上で状態の良い蜂群を選択し、どこに定置するかをよく検討しなければならない。一度定置してしまうと動かすことができないからだ。やむを得ない場合でも一日最大で1メートル以内、または働き蜂の行動半径となる2km以上離れた場所への移動となる。これは蜂が帰巣できなくなってしまうからだ。こちらは蜜源の少ない日本の転地養蜂と違い定置養蜂がほとんどであるが、本当に美味くて、活性度の高い蜜の採取は、同じ場所に年中置いていて期待できるものではない。 

とりわけマヌカ花蜜に至っては、その多岐にわたる品種と生息地によって大きく異なってくる。だから常に蜜源であるマヌカ樹木のデータ収集を要するのだ。これは地道な努力によって成り立ち、単にマヌカ蜜といっても千差万別なのである。蜂飼いの立場からすれば、消費者である顧客様にもこの様な現実をご理解いただきたいものである。 
養蜂は、大規模になるほどその飼育方法が人工的になり、且つ安定供給を目指すことになる。今やマヌカハニーは世界的にその機能性が知られるようになり、マヌカと名の付く製品なら飛ぶように売れてゆく。特に大きな製造会社は安定供給に全力を尽くしている。何の製品でもそうだが、この時点で様々な製品が流通することになる。 
下劣な言いかたをすれば、この時点で味噌糞状態の量産製品が出回る事になる。この事は企業として利益を出してゆくには、需要に対して供給が安定しなければマーケットから相手にされないので、特に大規模養蜂会社にとっては致し方ないことかも知れない。しかしながら、この事は過去がよく物語っている。
 
当時、国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)のウイルス室長であった、松野哲也博士と協和発酵による共同研究グループが、ブラジル産プロポリス原料を使った抽出液中に抗癌活性物質を発見したことを発表し、これが日本で爆発的にプロポリスが広まるきっかけとなった。私は当時ブラジルで養蜂をしていたことから大きなチャンスと捉え、原料生産とその買い付け、そして輸出で80年後半から90年代にかけ、日本の原料輸入量の60%強を受け持ったことがあった。
訪日の際は、私が輸出した原料がどのような製品になっているかは興味深いものだったので、様々な製品を取り寄せ試飲したものである。結果的にダメな物が多くて失望した。プロポリス抽出液の生産は、溶剤と使用原料でどのようにもなり、コストを下げることは非常に容易なのだ。最も多い方法は、人気のあるブラジル産を少なくして、安価な中国産の比率を高めることだ。しかしこのような事が長続きするわけもなく、時間が全て解決したのだ。消費者である顧客様の目は決して節穴ではなく非常に厳しい。過去に、いい加減な製品を量産した業者が現在どのようになっているかを知れば、そのことは明らかに分かるであろう。 

このことからも、正に現在のマヌカハニー業界が当時のプロポリスと同じ状態にあると確信している。製品を買われるほとんど全てといってよい顧客様は、その機能性に期待されている以上、それに応える製品を供給するのは当たり前の事である。しかし、その当たり前の事がどれだけの製品に反映されているのかは極めて疑問であり、マヌカハニーについては特に、大規模生産者において多くみられ、この事は結果的にまがい物のプロポリス製品を作った業者と同じように自滅の道をたどると示唆(しさ)されるのである。
事実、過去においては英国をはじめ、輸出先より大手の製品につき訴訟され敗訴した経緯がある。 

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