ミツバチが作る完熟蜂蜜

このところ随分と理屈っぽいブログとなってしまった。本当はこんな悠長なことを書いている時間などないのである。この時期のミツバチたちは蜜を濃縮するため、完熟蜂蜜の生産に全力で活動している。とにかく蜜中の水分を早く除去し糖度80%以上にもっていかなくては発酵してしまう。酵母菌は糖分を餌として増殖し発酵するので、蜂たちは越冬のエネルギー源として発酵した蜜は使えないのである。どの巣箱からもミツバチの起こす旋風の羽音が聞こえてくる。蜂たちは飛行目的にならないように羽の角度を変えて激しく羽を振動させ、筋肉を動かすことによって熱と風を作り出し脱水作業に必死である。こうして出来上がった濃度の高い蜜は湿気を遮断するために蜜蓋と呼ばれ胸腺から分泌されるワックスで密封され、越冬に向けての保存食としてストックされる。だから巣箱内に湿気が入らぬようサポートしないといけない。こうしてできた貴重な蜜を、私ども蜂飼いが横取りすることになる。こんなことを考えると人間の行いが一番悪いのは確かである。しかしそこには蜂飼いの哲学が多少は?存在し、彼女(ミツバチは女系集団)たちが越冬できる蜜の量は必ず残しておく。
蜂飼いの大部分はほとんどすべてに近い蜜を取り出し絞ってしまう。これでは蜂は死んでしまうので代わりに砂糖水(シロップ)を餌として与え、来春まで何とか命をつないでいくようにする。まだ完熟蜂蜜には程遠い、蜜蓋などもされていない巣房までも搾り取ってしまう。こうした湿気の多い蜜は加熱加工して濃縮するので、この段階ですでに人間にとっても重要な有用酵素類が失活してしまう。酵素はタンパク質であるので加熱すると不可逆的に変性してしまう。つまり氷は解けて元の水にもどるが、ゆで卵は生卵に戻らない。加熱加工されたハチミツはもはや生蜂蜜とは大きく異なる。わかりやすい例えで言うなら、栄養素的にはマグロの刺身とツナ缶ぐらいの差があるといっても過言ではない。こうした量産製品がマヌカハニーの名のもとにネット通販はもとより、デパートやスーパーでも売られるようになってきた。これは私のところの製品と比べ正に ”似て非ざるもの” である。そして越冬のための蜜までも採って(盗って)しまい代わりにシロップを与えるのは決して得策ではなく、ミツバチの健康のことを考えれば決して行ってはならない。製品をご利用になる顧客様の健康は、ミツバチが健康であることが原点であることは言うまでもないことなのだ。

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