ポリネーションの現実

前回は色々な木に異品種を接ぎ木して多品種を得ること、その受粉にはミツバチが一役買っていることを話した。ミツバチを受粉に利用することを “ポリネーション” と呼ぶ事も以前に話したが、これは何も果樹栽培だけに限らず、野菜栽培においてもミツバチは大きな貢献をしている。

少し前にミツバチがいなくなってしまう不可解な事件が世界的に発生した。その影響で今でも以前のようにミツバチは多くない。農薬会社が市販した「ネオニコチノイド」という農薬がその原因であることが分かってきた。この殺虫剤は植物体への浸透移行性が高く残効が他の農薬に比べて長いので、散布回数を減らすことに利点があり利用された。特に蔬菜(そさい)農家・果樹園での使用頻度が多く、スプレーなどの家庭用殺虫剤としても普通に使われていた。私のところの蜂場は人里離れた山岳地帯なのでこの影響は特に受けていないのは非常にラッキーだった。この農薬にミツバチが曝されると、神経伝達機能がやられてしまい方角が分からなくなってしまう。そして帰巣できなくなってしまうと言った非常に恐ろしい薬である。ミツバチの生息数が大幅に減った原因は長く不明であったが、多くの広域な調査でネオニコチノイドが主原因であることが判明した。当地ニュージーランドは工業政策を放棄した完全な農業立国であるが、花粉媒介役のミツバチが大きく減少した結果、広く農業分野にはかり知れない打撃を受けたことは記憶に新しい。こうしたダメージを受けたことによって如何にこの昆虫が自然界において広域な貢献をしていたかを思い知ることになったのである。ミツバチはマヌカハニーを採るだけの虫であると思ったらこれは大きな間違いで、生態系に非常に大きく貢献をしていることは言うまでもない事である。

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