酒盗(しゅとう)の作り方

また前回の続きだが、カツオを直接通販で買い内蔵には手を付けないで欲しいと希望した。通常大型の魚は内臓が取り除かれて到着する。この方が鮮度が保たれるからだろう。はちきれんばかりのパンパンに張りのある腹を開くときれいで丸々とした内臓がそのままコロンと出てきた。鮮度の良い証拠である。
酒盗の作り方は色々だが、私の方法としては二通りがある。まず、新鮮なうちに苦味成分がある胆嚢袋を取り除くことが大切で、これを忘れると発酵してからの除去は難しい。そしてこの内蔵に岩塩を振りかけそのまま2週間かけて発酵させるか、他の方法として、内臓を取り出してからすぐに消化器内の内容物を取り除き適当な大きさに切って岩塩、日本酒、みりんを加え、そのまま本漬けにしてしまう二通りだ。私は最初から本漬けをしてしまうより、そのままの状態で仮漬けをして2週間待ち、発酵した後に本漬けした方が味に深みが出て美味しいように思う。要するに内臓を取り出して胆嚢の袋を取り除き、そのまま塩だけで漬ける。
冷蔵庫内で2週間して取り出し、消化器の内容物を取り出して本漬けとなる。ここで岩塩の量により発酵速度が変わってくるが、少し濃い目にしてゆっくり熟成させる。仮漬けの良いところは、腹から取り出した内臓を水で洗わずそのまま漬け込む点である。消化器内に含まれる内容物や血液も全て発酵させることにより非常に深い味となる。いや、腸管内の内容物によっては除去せずに、特にオキアミなどを大量に食べているものはそのまま発酵させたほうが旨い。発酵後は適当な大きさに切って前記のように酒、みりんを入れてさらにもう1週間熟成させる。カツオは非常に血液の多い魚だが、この血液も発酵して漁醤となりさらに深い味わいとなる。塩辛作りは塩加減が重要で、私は岩塩を使い精製塩は料理には使わない。やたらしょっぱいだけで甘味やまろやかさがないからだ。こうして出来上がった塩辛は食べるときに小分けにして取り出すが、その都度必ずかき混ぜて空気を入れる。こうすると出来上がってから1ヶ月は美味しく食べることができ、発酵が進むにしたがってしょっぱさを感じなくなる。発酵させる段階で日本酒に酒粕を溶かしたり塩麹を使うと、香りも良くマイルドになる。
マヌカハニーも完熟してから一定期間、巣箱内で追熟させることによって活性度が高くなり味にまろやかさが出てくる。これは塩辛のような発酵とは関係ないが、時間をかける事によりそれだけの円熟味が出るところが加熱・加工された量産製品とは違う生蜂蜜の不思議さである。

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