美しくも悩ましい春

蜂場に行くと商売柄どうしても蜂だけに集中して他のことは目に入らない。これは一種の興奮状態なのである。なんでも一極集中し、それを長時間続けるエネルギーが不足し、仰向けになって天を見つめて休むことになる。そしてやっと周囲の状態を把握できるようになり、春の訪れを五感で感じるようになるのだ。ミツバチが飛び交う羽音、草花や木々の若葉、風薫る春風、鳥のさえずり、蜂場に横たわると色々なものが見えてくる。純白で可憐な花をつけた野蒜(ノビル)が目の前に咲いている。もうこんなに育っているのかと感動に近いものを感じ、ゆっくり根っこを引き抜くと真っ白な球根が良く張った根とともに現れる。野蒜狩りをしようと早めに巣箱の内検を終わらせたく思うが、この時期の巣箱の内検は重要である。温かくなると同時にミツバチの天敵でダニ(ミツバチヘギイタダニ)の大量発生があるからだ。今年の春は特に量的発生が危惧されているとの情報があるので、その予防をしなければならない。とりわけ養蜂は先手先手の作戦が重要である。

その策としてまず重要なのは女王蜂の更新だ。産卵能力が低くなった女王蜂は群勢の低下につながり、天敵に対する防御や各種疫病に対して免疫力が弱くなる。次に殺虫剤の利用であるが、これは化学薬剤が含まれたものは即効性があるが私は使わない。これらの成分がハチミツに混入するし、それ以上にミツバチにとってのダメージが大きいからだ。ハーブ由来の天然成分を利用した殺虫剤があるのでこれを使う。通常ある程度ダニが増えてきてからの利用となるが、私はそれでは遅いと思いその兆候があった時点ですぐ実施する。
春が近づくと、女王蜂は種族維持のため本能的に雄蜂を産卵する。巣箱内にある雄蜂巣房の蓋を破ると幼虫にダニがアタックしている。幼虫は純白なので黒色のダニは小さいがすぐ見つけることが出来る。一匹でも発見したら即殺虫剤を利用する。オーガニックの殺虫剤にはいろいろな種類があるが、短冊状にしたリボンに殺虫剤を染み込ませた数種があり、主に除虫菊の成分を抽出したものがある。これを巣枠の間に1箱2か所吊り下げる。できるだけ蜂が集中しているところが良い。(続く)

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