体内におけるエネルギー産生

前回と前々回は薬剤の話をしてきた。以前に訪日の際、日本の医療機関で証明書をもらうために訪れたことがある。待合室は大変な人でごった返している。今や社会保障も充実し誰でも保険証を利用でき、少しでも体調がすぐれなければ医療機関を訪れて薬をもらうことが当たり前のようになっている。調子が良くなれば薬によって治ったと普通に考える。結局、己の健康は医療機関に丸投げし、すべてお任せである。この辺の考えが私にはどうもピンと来ないものがある。
自分の身体は己が一番よく知っているし、病院などに行かなくても自分で治すという考え方は昨今の日本人にはどこかへ行ってしまったのだろうか。病気は薬によって治ったと多くは勘違いをしているように思えてならない。薬剤は身体にとって異物であることは言うまでもなく、もっと言えば毒物なのである。こうした物質はヒトにとって治すきっかけを作っているのであって、実際には本人の体力で治していると私は思っている。 

体力とは、エネルギーを産生することによって生じる。心臓を一回鼓動させるにも相応のエネルギーが必要となる。ではそのエネルギーは一体どこで作られているのか、それは60兆個もある細胞の一つ一つで産生されている。食餌から吸収されたグリコースが複雑な回路を経て水素イオン勾配を作り出し、その勾配を利用して産生される。これは例えるなら電力と同じで、水力発電所は高いダムの下にあり、水を落として位置エネルギーが発電機を回し電力に替える。これと同様に、細胞内にあるミトコンドリアが水素勾配を利用し(F1モーターと呼ばれる発電機様のエネルギー産生機構を回して)高エネルギー結合のリン酸を作り出すことでエネルギーを得ている。このリン酸は、3つのリンが高エネルギー結合によって結びつき、この結合が切れたときにエネルギーを出しアデノシン2リン酸になる。これがF1モーターによって、再度アデノシン3リン酸に合成される。

このように地球上の生き物は同じようなメカニズムによって生命を維持している。ここからは私の持論であるが、健康とはミトコンドリア内でどれだけのエネルギーを作り出すことが出来るかによって大きく異なってくる。近年、アルツハイマーの原因は脳細胞内にあるミトコンドリアの壊死によってエネルギーを失い、脳が死滅することによるなどと発表されている。ミトコンドリアはもともとヒトの細胞にはなく、他のバクテリアと共存しやがてヒトの細胞の一部となったといわれている。どのような経緯をもって、他の生物をヒトの細胞の傘下に加えることが出来たのかは現在でも不明である。従ってヒトの細胞と異なり、ミトコンドリアのDNAは環状であり明らかに異なっている。ミトコンドリアは酸素を利用して大きなエネルギーを得ている。酸素は猛毒な物質でこれには大きなリスクを伴うが、それと引き換えに高エネルギー産生機構を得ることになったといわれている。生存に打ち勝って行くためには数々のリスクを超越してゆかねばならないことは生物としての宿命なのかもしれない。マヌカハニーなどは細胞の活性化、つまりミトコンドリアのエネルギー産生に貢献しているものと示唆している。

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