肺炎と抗生剤・その3

(前回の続き)長女の肺炎に奏功したこの抗生物質「エリスロマイシン」は、細菌のタンパク質を作る部位70Sリボゾームの50Sサブユニットに強く結合し、アミノ酸の伸張を阻害することによって蛋白質合成を出来なくさせてしまい菌の増殖を阻害する。つまりβラクタム系抗生物質は殺菌的な、マクロライド系薬は静菌的な効果がある。一方、ヒトのリボソームの構成は細菌と異なるため(80Sリボゾームで60Sサブユニット)感知しないとされている。そのようなことから、化学薬剤は救急・救命や手術には絶対に必要であるという考えは私には強く焼き付いている。
他の抗菌薬として、増殖する菌類の親のDNAをコピーできなくさせてしまうキノロン薬は、DNAジャイレースと呼ばれる酵素を阻害することによってコピーをできなくしてしまうDNA転写阻害薬だ。また、人間は葉酸を食から取り入れるが、細菌は葉酸を自ら合成しなければならず、葉酸合成が阻害されるとDNAやRNAを作ることが出来ない。これらの阻害薬も人間には関連性がなく無害とされる。しかしながら先のブログに書いたように、腸内フローラ(腸内の微生物生態系)の助けを借りて食べ物が分解され、栄養素として取り入れられている以上、これらの抗菌薬が無害であるはずがない。

言うまでもなく日頃から病気や感染症などにかからぬよう、特に近頃は徹底した「予防」に努めることが最も重要だ。薬剤、とりわけ抗生剤・抗生物質の乱用は、薬剤耐性菌の出現と耐性遺伝子の拡散につながることとなる。ヒトの常在菌層に、菌種の壁を超越しその耐性遺伝子が侵入してくることを考えると問題は実に深刻だ。とりわけ抗生剤・抗生物質の存在を前提として成り立つ多くの手術は大変なリスクとなってしまう。やはり天然の活性物質の利用による予防を真剣に考え、薬剤は緊急時や救急救命のために温存し、安易な利用は極力抑えなければならないと思う。薬剤耐性菌は抗菌薬の乱用によって生まれる。これは農・畜産業分野でも勿論厳しい規制が望まれるところだ。

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