”アマゾンの唐辛子”

30年も昔の話だが、甥が夏休みを利用してブラジルに訪れ、実際にサッカーを体験したいというのでリオデジャネイロでは有名な2つのクラブチームの少年部に入ることになった。午前中と午後に分かれてこの2チームで練習をしたが、日本では小学生からゴールキーパーをやっていてたので、ブラジルでもその守備で1か月近く一生懸命に練習をした。現地のクラブチームはそれぞれが張り合っていて、2チームそれぞれで練習していることは伏せて入れてもらっていた。コーチは結構なスパルタで毎日厳しい練習を1日中やっていた。よく頑張ってやり抜いたので、帰国前にアマゾンに入植している同窓生を尋ねることにした。
リオの空港からアマゾン河にあるマナウスという町はリオから2,800Km 離れ、これは日本とフィリピン間に相当する。アマゾナス州の州都で河口から約1,200Km上流の空港に下り、そこから川下のサンタレンという町まで更に800Kmの空路を使い、そこから下流にある、複数の同窓生が住む目的地モンテアレグレまで130Kmは川舟で下って、一週間ほど先輩や後輩の下でお世話になった。私は学生時代とブラジルに移住してから幾度もアマゾン方面を訪れているが、甥や息子にとってはブラジル大陸の広大さが実感でき、海のような大河など短い旅ながら楽しい旅になった様だった。
アマゾンの様々な料理を食べたが、殆どの料理にはからし油をかけ、その強烈な辛味とフルーティで独特な香りがその後忘れられなかった。その唐辛子を ”アマゾンの唐辛子” と呼んでいた。その後そのことはすっかり忘れていたが、息子がどこかの庭で作られていた唐辛子を失敬してきて「これは ”アマゾンの唐辛子” に香りがすごく似ている」というのである。どれどれと臭いを嗅いだ途端、熱帯雨林気候の独特な熱気と湿度が押し寄せるように蘇り、正に現地で味わった ”アマゾンの唐辛子” そのものだった。しかし現地のものは小さく三分の一ほどだった。その後 Windows95 がリリースされインターネットが急速に普及し、この唐辛子を検索して分かったのだが、現在ウィキペディアには以下のように記載されている。

【ハバネロの辛さはおよそ300,000スコヴィル(辛さの単位)で、ギネスブックにはGNS Spices Inc. が1994年に申請した最高記録として577,000スコヴィルが掲載されている。その起源は中央アメリカから南アメリカで、アマゾン盆地かその近くの沿岸部である確率が最も高いと考えられており、そこからユカタン半島に伝わったようである。】

私たちがアマゾンで味わったのは、後に “ハバネロ” と呼ばれ、世界一辛い唐辛子という事でギネスで紹介され有名になったものだった。多分その原種であった可能性が高い。
拙宅の食事は今でもブラジルスタイルでアフリカや地中海の味付けが多く、この ”アマゾンの唐辛子” は激辛であるが柑橘系のフルーティな香りが料理を引き立て、アクセントとして必需品だ。毎年栽培しているが画像のように今年も大きな実が沢山採れたので、息子夫婦や身内などにも加工して送ろうと思っている。怖ろしいほど辛いのだが、食後はマヌカハニーを舌にのせると不思議と辛味が消えるのも面白い。

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