薬剤耐性遺伝子と未来・1

ピロリ菌除菌に関して、医療機関は全てといっても良いほど抗生剤・抗生物質などの抗菌薬を使用しているのが現実だ。そしてこれら抗菌薬に対する薬剤耐性菌の増加もさることながら最大の問題は、薬剤耐性菌の持つ遺伝子の拡散によって広域な菌類が菌種の域を超越し、薬剤耐性遺伝子が伝播することにある。
増えているのは耐性菌そのものよりもその耐性遺伝子自体であり、菌類は単なるその遺伝子の担体に過ぎないという現実だ。これについては以前にも触れたが、これらの薬剤耐性遺伝子が人間の常在菌層にまで侵入してくることを考えると、極めて深刻な状態を想定しなければならなくなる。すべての大小の手術を問わず、これらは抗菌薬の存在が前提として成り立っている。その多くは、耐性を持った菌類が出現した場合、全ての手術が暗礁に乗り上げてしまう事になる。
この問題は国家レベルで慎重に考え、安易な抗菌薬の乱用は人類そのものへの生存を脅かすものになってしまう。従って薬剤とは異なったメカニズムを有する天然の活性物質の存在とその意義を認識する必要性があり、それは今後大きなウェイトを占めてくるものと思っている。

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