オス蜂のこと

2017.09.22

そのドローンの雄ミツバチについてだが、このオス蜂は完全に女王蜂のコピーであって父親はいない。染色体の数は女王バチの場合32本、オス蜂はその半数の16本である。要するに、未受精卵から生じる半数体である一倍体の個体は雄であり、受精卵から生じる二倍体の個体はメスとなる。
メスである働き蜂は、半分ずつ母と父親の遺伝子を持っている。オスはメスに比べ身体も大きく、特に顔と目が大きく太っていて愛嬌がある。役目は交尾のみで、他は巣箱内でぶらぶらして特にこれといったミッションがない。時間が来ると空中4、50メートルの上空で女王蜂を待ち受け交尾の機会を狙う。女王蜂がそこにやってくる。そこには多くの他の群れから来たオス蜂が集まっている。双眼鏡を片手に観察すると、巣箱にいたオス蜂からは想像を絶するほどまるで戦闘機さながらのアタックがはじまる。運よく?交尾が出来ても、その瞬間に生殖器もろとももぎ取られて壮絶な死を迎える。女王蜂は、その後も多くのオス蜂と交尾を重ね沢山の精子を蓄え、産卵に備える。これは多くのオス蜂の精子を取り込むことによって、生命の多様性を得るためと示唆されている。
一方、交尾の争いに負けたオス蜂は帰巣して全く働かずに巣箱で餌をもらってのんびり過ごすが、やがて秋の訪れに伴い花蜜も少なくなってくると働き蜂によって巣箱から追い出される。生きて行く術を遺伝的に知らない哀れなオス蜂の一生が終わる。これらのミツバチの生活を見ていると、では人間界はどうなのかという疑問が起こってくる。多分それほど変わるものではなく、男どもはオス蜂と基本的には同じではないかという情けなさが脳裏を横切るのだ。
オスの存在価値だが、これはメスによって作り出された産物であるともいえるのではないかと思ってしまう。生命は太古に微生物からはじまった。菌類だがこれは有性生殖などといった高等?なものではなく、単なる分裂によって増殖する。全くのコピーである為、何かの異変が起こると全滅のリスクがある。単一性の為、生存確率が極めて劣ることになってしまう。それを補うため、オスが出現し多様性が構築されたものと・・・。
そのように考えると、ミツバチ社会に限らず当てはまることが沢山ある。カマキリのオスは、交尾が終わるとメスの栄養源として食われてしまう。メスに言わせれば、これから子供を産むのだから食ってしまっても当たり前という理屈となる。人間の男だって偉そうな(偉くはないのに・・・)事を言っても結局は、女房や子供のために深夜までこき使われる。やっと定年となったら、せいぜいゴミ出し程度の無意味な事をやりながら、粗大ゴミ扱いとなってしまう。そんな事を考えると、ミツバチのオスも全く同じで、オスどもは多様性を得んがためにメスによって作り出された遺伝子の担体(運び屋)に過ぎないという立派な学説?が成り立つのだ。(まだオス蜂は、一時期にせよ巣箱で優雅に暮らせるだけ良い!)

関連記事

もっと見る