Otakusaと呼ばれるアジサイ

前回はアジサイの咲く南半球のクリスマスや正月について少しだけ触れた。季節が逆になるこちら南半球は、今年は特に異常気象なのか初夏でもそれほど暑くもなく、やっとアジサイの花が咲き出している。御地でアジサイといえば6月のうっとうしい梅雨の季節だが、ここには梅雨がないので快適な気候が続く。ニュージーランドのこの初夏が私は一年で一番好きだ。もっとも日本独特の美しい四季は、この梅雨があるからなのだろうとも思っている。でも不思議な事に、梅雨のない拙宅の庭には色とりどりのアジサイが咲き、夕立で濡れた淡い花々を見ていると日本の梅雨を忍ぶことができる。

このアジサイはこちらでは “Otakusa” と呼ばれ、園芸店で鉢植えが売られている。この由来を調べてみると、当地のアジサイは日本からのものなのである。
江戸末期、長崎に住んだ日本の医学の父と言われるドイツ人医師シーボルトが当時、愛人で一緒に住んだ ”楠本 滝” と別れてドイツ本国に帰国した時に、彼女からもらって持ち込んだのがこのアジサイだ。彼はそれに Hydrangea Otakusa と命名したそうだ。(Hydrangea⇒水草?)つまり ”楠本 滝” を忍び ”お滝さん” と名付けたそうだ。 
その “お滝さん Otakusa” が欧州から世界に広まり、イギリス人によって当地NZにももたらされた事になる。夕立に濡れた色とりどりのアジサイを見るたびに、幕末のシーボルトとお滝はどんな生活だったろうか? そして目の前に咲いているこの花は、どんな経路で我が家の庭で咲いてるのだろうかと思いを巡らせるのだ。

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