マヌカハニーの次期シーズンまでに

とにかく養蜂業は毎日様々な仕事が多く、地道に一つずつ片付けていくしかない。どれも全て重要な仕事であり何一つ疎かにはできない。
使用済の巣箱ひとつとっても次期シーズンまでに整理整頓し、清潔な環境で保管しなければならない。巣枠なども様々な付着物を丁寧に取り除き、塩素液に浸して直射日光で消毒し、さらに冷凍にして天敵の巣虫の卵を殺してからの保管となる。保管場所はできるだけ明るい所でなければ巣虫の成虫の蛾(ハチノスツズリガ)の産卵リスクとなる。この蛾の幼虫は、巣房(すぼう:六角形の巣穴のこと)を餌として成長し、非常に強い繁殖力で短時間のうちに巣房をボロボロに食い荒らす。
巣脾(すひ:巣枠に巣房が付いた物)は養蜂家の財産といっても過言ではない。これがないとミツバチは蜜を貯蔵することができない。従って巣房が付いていない空巣枠の場合は、まず巣房を作ることからはじめるがこれには沢山の蜜が必要となる。巣房となる蝋(ロウ)はハチミツが原料となってミツバチの胸腺からワックスが分泌される。このワックスを分泌するには大量の蜜を要し、1kg のワックスをミツバチが作る場合6kg の蜜が必要となる。
あらかじめ前シーズンに得た空巣脾を入れておくと、ミツバチに巣房を作る負担を掛けることなく即産卵し育児や貯蜜に対応できる。そんなことから巣脾は養蜂家の財産であり、これがなければ始まらないので大変貴重な存在となる。

日本では養蜂材料店で空巣枠が販売されているが、当地での販売は禁じられている。それはミツバチの疫病防止が目的であるのは言うまでもない。当地ニュージーランドは農業国であるため、生産については様々な細則がある。それはこの国が如何に第一次産品生産を重視しているかの所以である。この事は養蜂をやってみれば誰でも理解ができ、出所のわからない商業目的で売買される巣脾の安易な利用は、ミツバチの感染症対策上とても怖くてできないのはご理解いただけると思う。私のところでは空巣脾には全て番号を記入し、どの巣箱から由来したものかを一目で確認できるように管理している。後にその巣箱から病気が発生したことが分かった場合、勿論その群れから採れたハチミツは越冬のための餌としては使わないし、その巣箱に関連した備品も全て焼却処分にする。そこまで厳しくしないと感染症蔓延のリスクがあり、場合によっては壊滅的な損失となってしまい、結果的にはマヌカハニーにご期待いただく顧客様の意に背くことになるからだ。

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