Aged Beef(乾燥熟成肉)

こちらでも Aged Beef と呼ばれる、寝かせた生肉を付加価値を付けて高い値段で売っている。これにはサーロインなどの高級部位が使われている。大体1か月程度寝かせた物が多く、保存環境の温度や湿度に気を付けて熟成させる。これも前回書いた「魚を寝かせると旨味成分が出てくる」のと同じで、有用細菌による蛋白質分解によってアミノ酸を引き出したり発酵なども利用して香りを得ていると思う。通常の生鮮肉と比べ旨味成分が多く独特の香りがあって旨い。アミノ酸が連なったものが蛋白質であるので、細菌が産生する蛋白質分解酵素によってアミノ酸を得ることが旨味に繋がるのではないかと思っている。ただ塩を使わずアミノ酸を引き出すのは相当経験が必要で、温度・湿度の管理を要し下手をすると腐敗が始まってしまう。私はスーパーなどのセールを利用してまとめて牛肉を買いつけ、包丁で縦横に切れ目を入れて多量の岩塩を擦り込み、天気の良い日に日干しをする。日中3日程干し、夜中は夜露に当てて発酵を促す。などと言えば格好良いが要はほったらかしにするだけで、とても良い香りが漂い美味しい干し肉を得ることができる。これは塩蔵品として長く保管でき、必要に応じて利用する。
使う時は多量の塩を使っているので塩出しが必要だが、この塩味を利用したジャガイモなどの煮込みは干し肉の風味がイモに移り実によく合い素朴な旨さがある。発酵しているので生鮮肉と異なった香りと旨味がある。

我が家では来客があると一昼夜塩漬けした肉塊を半日干して1時間ほどビールに漬けこみ、炭火で回転させながら焼き上げるのが定番だ。炭といってもマヌカ樹木の薪を使いこの煙を利用すると、非常に旨いローストビーフが出来上がる。ワインをはじめいろいろな酒を試したが、肉そのものの風味を生かすのはビールが一番だと思う。塩漬けして日干しをするので水分が抜け、肉中にビールの吸収もよくコクのある焼き上がりとなる。こうして煙を掛けた肉は燻製の風味もあり、非常に日持ちがしていつまでも美味しく食べることができる。マヌカハニーに1週間ほど漬けて、乾燥した日に直射日光で干したビーフジャーキーはよく養蜂現場に持って行き、干したカリカリのパン(Crouton)に生ニンニクをガリガリこすりつけてジャーキーと一緒に食べると最高、これが牛でなくシカ肉ならハードワークも忘れ至福のひと時となる。

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