養蜂業にみる薬剤と未来

(前回のつづき)抗生剤・抗生物質をはじめとした抗菌薬は広域な菌類にダメージを与える一方で、人間にとって有用な菌類まで攻撃してしまう欠点がある事を前回話した。ところがマヌカハニーやプロポリスなど天然の生物活性物質は、こうした欠陥が少ない事が人工の抗菌薬との最大の相違点ではないだろうかと思う。また抗生剤・抗生物質の多くは酵素レベルによる作用機序(殺菌、静菌のメカニズム)であって、天然活性物質は薬剤に比べ複雑な物質が相互的に作用していることから、菌類が耐性構造を容易に獲得できないとされている。このような事を考えると薬剤と菌類の熾烈な限りない戦いに翻弄されるより、やはり自然にかえりそれを味方に付ける方が余程賢明ではないかと思うのである。人類は地球上の物質から出来ている以上、自然界を味方に付けるのは当然と考える。
随分くどくどと書いてしまったが、上述したように薬剤を乱用しなければこうした深刻な問題は生まれなかったことは事実である。薬剤と菌類の熾烈な戦いは得るものがないと思うし、次々と出現する薬剤耐性菌に対し新薬を出す製薬会社だけが恩恵を得るだけである。正にイタチゴッコそのものである。私は決して薬剤を否定するものではないし、救急救命には確かに抗生剤・抗生物質やステロイドホルモンなどの助けは有効である。しかしだからと言ってそれらに依存してしまったら様々な問題が暗礁に乗り上げてしまう事になる。こうした抗菌薬は乱用を避けいざという時に温存すべきで、もはや現在ではあまりにも乱用が進み耐性菌につき選択できる薬剤がなくなってきているのが現状であると言われている。また同時に、この戦いは結局は微生物側に有利に働き人類は敗北するとまで言われている。
以上の事を考えるとニュージーランド内で行われる薬剤不使用の養蜂は正しいのではないかと思う。他国のように薬剤を使った養蜂は、確かに一時的なミツバチの疾患解決に役立っているかのように見えるが、これは長い目で見た場合に蜂飼いの幻想にすぎないと思っている。そしてこれらの薬剤が蜂産品や他の農作物を介して人体に取り入れられることを考えると、やはり最終的には薬剤乱用は不幸な結果となってしまうのではないかと思うのである。

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