流蜜シーズンと蜜蜂たち

2020.01.14

でっかい高気圧がオーストラリアからやってきた。ニュージーランドとオーストラリアを挟むタスマン海 2000km 四方をすっぽり覆うほどの高気圧であり、これが通り過ぎるまで1週間は晴天が続くであろう。風はまだ少し冷たさを感じるが日差しは夏そのものである。250Km 遠方の山岳地帯にある養蜂場に早朝から出かけた。蜂場まで数十キロは続く無舗装の道路は3日も雨が降らないと砂埃を巻き上げ、ピックアップ四駆トラックは真っ白になってしまう。この辺りはマヌカ樹木の故郷ともいえるほど一面が自生林で覆われた場所で、純白で小さなマヌカの花々がまるで山肌を霜で覆うかのごとく見事に咲き乱れている。
蜂場に着くとすごい数の蜂が上空を乱舞し、これを見るたびに安堵感に包まれる。ミツバチが生活していく上では様々な問題があり、やはりこうした風景を見ると蜂飼いとして「ヨシ!」とつい頷いてしまう。現場に来ない限りこの様子は分からないし、蜂全体の動きを把握すればおおよその健康状態が分かるからだ。全体的に強群に育っているときは上空に飛び出し、帰巣してくるときの動きによって一目で判断できるものなのである。結局、マヌカの流蜜期にあわせて強群に育てていくこと、それにはシーズン外に如何に彼女らの(ミツバチは女系集団)生活環境を整えてやるかということ、そして産卵能力のある女王蜂、つまり女王蜂の性能によって大きく左右される。それがマヌカ流蜜のピークと合致しなければならないところに難しさがある。つまり、いつ開花し花蜜分泌はいつから始まるかの予測である。
と言ってもこれは気まぐれな自然相手ゆえに困難を極め、的中出来れば嬉しいのだが、各シーズンによって収量に大きく関係してくるので真剣そのものなのである。やはり展開する現場の自然環境に精通していなければ満足いく蜜が採れないし、それには蜂たちに如何に適合させる条件・環境を作ってやらねばならないかということになる。何の仕事でも同じだと思うが、やはりそこには魂を要し、魂が入っていない仕事は結果を出すことがないし何の価値も無いように思えるのである。

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