乱用は避けたいもの

人間の消化器には天文学的数値に近い多種多様の細菌類が生存していて、食物はこれら菌類の力を借りた化学変化によって分解され、栄養素として腸壁から吸収されている。抗生剤・抗生物質などの抗菌薬は、ターゲットとする菌のみに抗菌特性を示すのならばそれは理想的である。だがこうした薬剤は存在せず、特に今日使用されている抗菌薬は広域抗菌スペクトル(広い抗菌有効菌種)を有し、様々な菌類が感性を示してしまう。要するに抗菌薬で有用な菌も見境なく攻撃対象となってしまうのである。結果的には重要な腸内フローラ(腸内の微生物生態系)に大きなダメージを与えてしまい、個人差はあるもののこれらのダメージを解消できる術はない。
抗菌薬の副作用によって重篤な消化器障害が引き起こされ、それが原因で体内に供給すべきエネルギー源や栄養素を吸収、不消化物の排泄、およびそれらを正しく行うための運搬ができなくなってしまう。消化器は生活を支える器官として最重要であることは言うもでもない。こうした重要な作用は腸内細菌叢が司っているのであるから、抗菌薬が人畜無害などとは百歩譲っても言えることではない。決して抗生剤・抗生物質、或いはステロイドなどのホルモン剤を否定するものではないが、これらの乱用は避け、いざという時に温存し、日本の医療現場のように安易に使用するものではないと思っている。 

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