ブラジルという国・2

ブラジル人は非常に優しく、一人ひとりが全て神のご加護の下にある世界で最も信者が多いカトリックからなる国だ。独立後の歴史は全てのラテンアメリカがそうであるように、200年程しかない。プロテスタントの多いアメリカとは考え方が全く異なる。私の感じとしては悪く言えばとにかくカトリックは泥臭く、いい加減で、プロテスタントの様な厳しさはない。良く言えばもっと伝統的で歴史の重みを感じ、そこに住む人は個人的には優しくと言うか慈悲的要素が多いと思う。それだけに国としての発展性がないかもしれない。簡単に言えば、プロテスタントはもっと実直であるという事なのだろうか。
世界的に見てもカトリック教徒の多い国の経済発展は、ラテンアメリカを象徴するようにどこも貧乏なのが特徴である。”貧すれば鈍する” という事もあるが、経済的に裕福な国民が立派であるという事を言っているわけでは決してない。
例えば昔、私の片腕と言っても良い非常に有能な部下がいた。彼の奥さんには幼い4人の子供がいた。この事を思い出すたびに、昔ブラジルで見た名匠黒澤明監督の ”どですかでん”(東宝配給1970年(昭和45年)10月31日公開 原作:山本周五郎)の中の、三波伸介が演じる貧乏家族の一幕を連想してしまう。この映画の一幕にも沢山の子供がいて、それぞれが誰の子供かさっぱりわからないのである。ある日、その中の年長の子が近所の子供からいじめられ ”みんなが俺の事、父ちゃんの子でない” というのだ。父親役の三波伸介はその子を穴のあくほどじーっと見つめた後、いつもの穏やかな表情に戻り ”今度そいつにあったら聞いてみな、そういうお前はどうなんだと・・・誰も分かりはしない!” それを聞いた末っ子の女の子が ”アタイはお兄ちゃんの子” と言って全員が大笑いをし、いつもの平和な家族に戻るといった場面があった。(つづく)

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