中学に上がって

こうして中1の2学期が始まる頃には浜松市街に移り住み、田舎での生活は終わったわけで、市内の中学校に通う事になった。私の育った田舎に比べ都会?の子供たちは変にませていて、気の合う友達が中々できなかったことを覚えている。そんな時に水泳大会が行われ、担任からクラス代表として出るように言われた。どうして自分が指名されたのかは分からないままに出場しトップでゴールした。田舎にいたときは泳ぎが特に早いと思ったことはなかったが、どうして仲間たちはこんなに遅いのだろうと不思議でならなかった。
浜名湖畔に面する故郷では夏が来る前から泳ぎ、小学生になれば泳げない者は皆無といっても過言ではなかった。フジヤマのトビウオと言われ、その名を世界中に響きわたらせた古橋廣之進なども浜名湖出身だった。しかし私は走る方が得意だった。運動会に出れば前を走る者は1人も見たことがなかったし、入賞者への褒美に渡されるノートや鉛筆をはじめ学用品などは買ったことがなかったほどだ。上級生に悪態をつき追いかけられても、逃げ切ることには必ず自信があり怖い思いをすることもなかったし、逆に生意気を言って逃げる者は必ず捕まえることができた。こうしたことは、小学生まで思う存分田舎で過ごしたことが関係しているように思う。
今になって幼少時代の想いが、回り灯篭* に映る影のように様々なシーンが脳裏に現れては過ぎ去っていく。蛍などは本当に沢山飛び交い、瓶に入れるとその光が明かりとなるほど捕えることができた。それらを寝るときに蚊帳の中で放つと、我が家の天井はまるで夜空に光る流星の中にいるようであった。

*回り灯篭:枠を二重にし、回転するようにした灯籠。さまざまな物の形を切り抜いて内枠に取り付けろうそくの熱による上昇気流で内枠が回転すると、影が外枠の紙や布に回りながら映る。舞い灯籠。走馬灯。影灯籠。

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