マヌカ樹木の伐採と使い道

2017.10.11

このマヌカ樹木であるが種子が落ち、芽を出し、群棲する自然植生がある。密生しているのでこの自生林に入ってゆくには、蛮刀(ばんとう)が必要となる。前述したように日の光を非常に好むので、養蜂場がある北向き(当地は北半球なので北は日本の南に当たる)の斜面には、非常に見事な自生林を見ることができる。
巣箱の設置で、林を伐採し用地を作ることがよくある。ミツバチも日光を好むので、自生林中に巣箱を設置するのは感心できないからだ。できるだけ老木があるところを選びチェンソーで次々に伐採してゆき、適当な大きさに切り揃えて敷地内の道路まで引っ張り出し、井桁に組んで乾燥させる。夏なら3週間で充分だ。この材木は薪や炭などにするため、巣箱などを運んできたトレーラーの帰りの便に載せて自宅に持ち帰り、冬季にストーブの燃料や燻製用に使う。消し炭などでさえ非常に硬い良い炭を得ることができ、釣ってきた魚などの塩焼きには最高だ。

炭焼きがどうして旨いのかというと、LPガスなどは水素が含まれ燃焼する段階で水蒸気となるから、何を焼くにもカラッと焼けない。炭は炭素そのものだからこうしたことがなく、煎餅やウナギの白焼きは炭焼きに限る。ピザも一流店に行けば炭だ。マヌカ樹木から出る煙は非常に香りが良く、肉・魚・チーズなどの燻製には最高である。前にも書いたがスーパーなどで売っている燻製は、わざわざマヌカ樹木使用と表示して高く売っている。
燻製の肉は、山で獲ったシカ肉が一番旨い。岩塩で4日程冷蔵庫で塩漬けし、その後天気の良い日に前夜から丸一日、蠅除けのネットをかぶせて木に吊るし風干しをする。夜から干すのは、夜露に当てると塩分がマイルドになるからだ。こうすると肉が発酵してきて旨味が出てくる。つまり蛋白質が分解し、うまみ成分のアミノ酸が出てくるのでこれは絶対に必要だ。
拙宅には、バーベキュー用に煉瓦で釜戸が作ってあるので、ここでマヌカの薪を燃やし煙を作り、煙突に当たる上部にはアルミ製の大型容器で煙を受け止める。この容器は羊の水飲み用に昔使ったものを利用している。干したシカ肉をビールに暫く漬け、容器に吊り下げて逆さに伏せるようにし、下から煙をかける。煙突の煉瓦との隙間には新聞紙などを詰め、目張りして煙が逃げないようにする。こうして4時間ほど煙とその熱に当てれば、飴色に光った燻製が出来上がる。これを薄くナイフで切って自家製の赤ワインで一杯やると最高、野生の肉は噛めば噛むほど、味が出てきて至福のひと時となる。こうして作ったものは長く日持ちし、悪くなることは無くいつまでも美味だ。
食いしん坊の私はこの類の話をしたらきりがない。いい加減にしないとスタッフに怒られるのでこのくらいにする。

話を戻そう。マヌカ樹木伐採後は、整地をしないとならない。切り株などを放置しておくと巣箱の設置に支障が出るし危険であるため、抜根作業が必要となる。これが中々大変であるが、ありがたいことにマヌカ樹木の直根は、他の樹木と比べ非常に浅く、老木の場合はクワなどで比較的簡単に抜き取ることができるが、大木は車載のウインチで引っ張れば抜ける。
以前、雨季に車両が泥濘にはまって動かなくなった時に、ウインチのワイヤーを大きなマヌカ樹木の根本にひっかけて脱出を試みた。何とかうまくいったが、支点となったマヌカ樹木は大きく傾いてしまった。これは直根が浅い為である。その後は地面に穴を掘り、直接そこに専用アンカーを打ち込み、それが車両の重量とウインチの巻き上げ力によって地面に食い込んで行くが、その食い込みも1メートルほどで車両を脱出できることが多い。
蜂場のある地域はマヌカ樹木の群棲林で松などのしっかり根を張った樹木が無いため、車両を引き上げるにはマヌカ樹木ではあまりアテにできず、もっぱらアンカーが活躍する。伐採して整地したところは、放っておくと3年で完全に元のマヌカ再生林になる。

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