電気の威力

父は電気のプロだったことから、高電圧コイルを自作してこれに自動車のバッテリーを電源として組み合わせ、魚を感電させるウナギ捕獲器?を作った。完成後、どの程度の威力があるかを試すのに私がその実験体となった。両極を両手で触れさせスイッチを入れた瞬間とんでもないショックが両腕に走り仰天した。それを見て父は大笑いをしヨッシャと四国弁で満足した。数万ボルトと言う高電圧の人体実験であったのだ。技術屋であったので、高圧であっても流れる電流は知れたものだからと考えた事だろうが、実験された方はたまったものではなかった。強烈な電気ショックは筆舌に尽くし難い驚きであり、今でもこの事については腹が立つほどである。

その自作器を持って、父の工場の従業員や友人が集まり夜中にウナギ捕りをすることになった。日本の法律では電気で魚を取ることは違法なので、夜に出かけることにしたのだろう。ウナギの住んでいるところは私が詳しいので同行した。多分かなりの収穫を見込んでリンゴ箱を自転車の荷台に取り付けての出動となった。結果は ”大山鳴動して鼠一匹”(も捕れず)だった。
これは不思議で、昼間に小川の石垣から首を出している大きなウナギが潜む穴を私はたくさん知っていた。そこに捕獲器の電極を近づけても全然反応がないのである。この事は少年期の私には全く理解できない事だった。後になって分かったことだが、ウナギは夜行性で夜には餌を求めて穴から出るとの事だった。だから夜中にいくら高性能の捕獲器?を使っても捕れるわけはなく、後に私は天竜川の河原で石場に潜むウナギを父の自作器で試してみたが容易にウナギが感電して浮かんできた。ただ絶縁が完璧でなかったので時々強いショックで感電したし、これは法律違反なので実験だけとし、また感電もするのでやめた。当地ニュージーランドではこの方法は特に違法であることは聞いていないので、時間のある時には試してみたいと思っている。

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