自作のスポット溶接機・2

(前回より続く)電源を入れた途端に驚くほどの大きな音がしてスイッチを切った。回路などをすべて点検したが間違えたところはどこもなかった。おそらくトランスの鉄心を切断したままテストをした結果、強い磁場の発生が振動となって異常なほどの音になったと解釈し、やはり切断部分はちゃんと溶接してからでないといけないと思ったが、鉄心を溶接してしまうと欠陥が見つかった場合に面倒なので、再び電源スイッチを入れてみることにした。
今度は前回と違って大きな音を覚悟している。電源スイッチオン・・・バシャーンと前回同様の轟音だったが、慣れとは恐ろしいもので覚悟を決めた行動は何でもそうであろうが、腹が座っているので今度は別に驚くこともなく、この程度の音がしてもとタカをくくる。2次側コイルに接続された電圧計は想定通りの4ボルトを示していたので「よし!成功だ」と満足した。早速、直流溶接機(直流改造は自作)で鉄心の切断部分を万力で締め付けて2個ともに溶接が終わった。
この自作スポット溶接機は、以前に作った自作ジューサー(庭の樫の大木を切断した丸太を台座に作った果汁絞り機。グレープフルーツが毎年沢山なるので圧搾し果汁を得ようというわけだったが、その後長女が米国で高性能ジューサーを送ってきたので不要となった)を利用したものだ。トランスの鉄心を溶接し、この2台を台座にねじ止めした。さてこれで60%が完成だ。後は結束バンドを使って配線の固定と、肝心な電極を作るだけだ。
2個のトランスを固定すると、2次側コイルが少し窮屈な印象なのと絶縁のため鉄心から少し離した方がよさそうなので、線にあて木をしてハンマーで叩き間隙を作った。さあこれで最終チェックだ。はやる気持ちを抑えて配線を確認し三度スイッチオン。今度はブーンという低い音がうなり満足、しかし不思議なことに電圧計は4ボルトの出力が2ボルトしか指していない。あれと思った瞬間トランスから多量の煙が上がった。後になって分かったが、2次側コイルが鉄心に2か所で接触してそこに回路が出来てしまった。2次コイルを叩いたのが原因で絶縁がはがれ、鉄心に接触してしまい完全なショート状態だった。元の木阿弥である。すべてが振出しに戻ってしまった。
気を取り戻して、溶接した鉄心を再び切断し2次コイルを取り出し、大型バーナーで焼いて絶縁テープや塗料を除去し、絶縁が完全でなかったことを反省して今度はヒートシュリンクと呼ばれる熱によって収縮する絶縁用チューブを近くの電気屋で手に入れて被覆することにした。どんなことでも一発でうまくいくことは稀で、明らかなミスや想定外の失敗はあるもだ。結局必ずうまくゆくというポジティブな考えと、試行錯誤の連続で諦めないことが成功に結び付くように思う。この溶接機は最終的には上手くいって切れた鉄帯などの修理に役立ち、リベートでの修理と比べると一瞬にして溶接ができ即修理が可能となったので重宝し戦力となっている。しかし使い勝手においてはまだまだ改善が必要だ。

*画像にある切断された右側の鉄帯は黄色〇印の2カ所をリベートで止め修理。左側の鉄帯は4カ所をスポット溶接したもので、錆を落としペンキを塗って再利用する。スポット溶接は1・2秒でできるので非常に効率的だ。

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