"除草剤" 養蜂職人が語る真実

イメージ画像

季節の逆なこちらニュージーランド北島にも日本と同じように春一番が吹き始めた。日差しは日増しに明るくなりマヌカの若葉が萌えている。裏腹に冬に咲き鮮やかな黄金色のゴースと言うイギリス渡来の棘だらけの雑草花はすっかり勢いを無くし散りかけている。日本ではどこかのライターが書いた”グリホサートカリウム塩”が含まれた除草剤(商品名ラウンドアップ)がニュージーランド産はちみつに残留している可能性があるとしてニュースとなっている。弊社にも沢山の問い合わせがあるようだ。しかしながら、こんなことはニュースでも何でもない。以前からこの問題は指摘され、何もはちみつに限らず、全ての農産物にはこのリスクがある。農業は雑草との戦いである以上、除草剤との問題はつきものである。
日本のコメ農家の話では自家用は別の水田でつくるという話を聞いたことがある。・・・
さて、冒頭話した草丈2メートルに達するゴース(Gorse)と言う棘だらけの雑草だが、これは植民時代に生垣に植えられたり、農作物へのナメクジの侵入を妨ぐために輸入されたと言われているが、今やニュージーランド中いたるところで普通に見ることが出来る。特に牛や羊の牧草地に侵入してくると植生が強いので、瞬く間にはびこってしまい畜産業泣かせの雑草である。(その他にTobacco Weed・Wild Rose・Kikuyu・Wild Berryなど)養蜂も畜産業に分類されるが、私どもにとってはこのゴースと言う草は数少ない冬季に咲く花として非常に重要で、この花の花粉はミツバチにとって良質な蛋白源であり特に幼虫の生育には必須的な存在でもある。だから、蜂場内にこの草が生えたからと言って目の敵には決してしない。(参照ブログ:https://tcn-ec.co.jp/nz-message/13317-2/ )こちらに来て25年以上養蜂を生業としているが、もしこの花がなかったならとりわけ越冬には苦労したであろう。ところが牧場主にとっては大変な邪魔者、百害あって一利なしで大切なクローバーをはじめとした栄養価の高い牧草が、この侵入者によって台無しになってしまうしその繁殖力は半端ではない。これらの群生地には、トラクターでけん引したスピードスプレアーと呼ばれる噴霧式ポンプ車、或いはヘリコプターを利用してラウンドアップなどのグリホサート系除草剤の空中散布が行われる。

はちみつへの影響は、特に蜜源がクローバーである場合に顕著に表れる。だから、農地・牧場などが蜂場から近いと、どうしてもこの影響が避けがたいことになる。私のところの養蜂場は人里離れた人っ子一人いなくマヌカ樹木を通り抜ける風音とミツバチの羽音しか聞こえない山岳地帯にある。でないと高活性のマヌカハニーの採取が困難だからだ。
日本向けに輸出されるマヌカハニーと呼ばれる製品は、ニュージーランド全土から買い集められたはちみつに様々な蜜を混合してつくられている。大規模業者ほどこうしたやり方が顕著である。その理由は、均一化された製品と安定的な供給が命となるからだ。世界中のはちみつマーケットを相手とする以上、当然そうなってしまうのであろう。従って純粋なマヌカハニーなどと称しているが実に不透明である。

マヌカハニーのランク付けは特有成分のメチルグリオキサール(MGO)の含有量が決め手となる。量産のマヌカハニーは、そこそこの活性度を得るために安物のはちみつによって増量される。その方が本物を売るよりはるかに儲かり安定供給が可能になるからだ。私どもは自社生産として、マヌカハニーの特長を十分理解した上で活性度の限界への挑戦を25年以上してきた。また、同時にリーズナブルであっても純粋な製品を生産理念としている。だから、苦労して採った本物に除草剤の影響を受けた安物のクローバー蜜などによる増量は、職人のプライドからとてもできることではない。

昨今はコロナの影響かマヌカハニーの人気が国際的で、マヌカハニーは高級はちみつとして位置付けられている。依頼した当地の充填業者も、信頼性が希薄で異なったはちみつを充填されたなどの話も良く聞く。
弊社では、私たちやその指導下にあって連合する小規模養蜂場から採ったはちみつそのものを、直接バルクで輸出し日本のJAS規格を有する工場で充填している。従って弊社製品は除草剤などとは無縁な話であり、そうした量産品とは似て非ざるものである。

問題のグリホサート系除草剤についてであるが、この薬は植物体内においてアミノ酸合成を阻害するメカニズムがあり、葉面散布によって大方の植物は死んでしまう皆殺し的な薬だ。ところがこの除草剤に自然耐性を持っている植物もあり、その代表的なものがクローバーである。牧場などにはびこるイネ科はじめ広域な雑草にも効果があるが、クローバーはグリホサート系に対して耐性があるため、枯れてしまうことは無い。放牧地で重要な牧草(クローバー)には、グリホサート系は願ってもない除草剤と言われ使用頻度も極めて高い。こうしたメカニズムを利用して遺伝子組み換えにより大豆・トウモロコシ・ジャガイモなど、多くの可食植物にクローバーなどの除草剤耐性遺伝子が導入されている。それにより無作為に除草剤が使用されても栽培植物にはダメージが免れることになる。これは大幅なコスト削減に貢献するため、世界中で使われている。
私どもの養蜂場にこの恐ろしい除草剤が撒かれてしまうと、マヌカ樹木はじめ前出のミツバチにとって栄養価の高いゴースなど、すべての植物がグリホサートによって根まで完全に枯死してしまう。勿論、マヌカハニーなどの採取は夢の話しと化す。私どもニュージーランド事業所は25年前の設立以来、自然に任せたマヌカ蜜の高活性蜜採取を唯一の目標として、人里離れたマヌカ樹木群生地の山脈地帯で養蜂を実践してきた。クローバーなどの除草剤に汚染された蜜など、と言うよりこうした雑蜜は量産品製造屋が興味あることで、純度を求める弊社とは大よそ関係ない。そんなことから弊社製品に限っては何らこうした人為的な問題は皆無であり、この世で最も安全な食品と宣言したい。

TCNマヌカハニーの安全性が証明されております。食品検査結果書は >>こちら

2020年8月18日(火曜日)
(株)TCN ニュージーランド事業所 主幹
生産担当  養蜂職人  辻   重