ブラジル産プロポリス原料の真実 ep05. ミナス州産ユーカリ原塊という神話
このように多種であるため、起源が同じユーカリの原塊でもそれぞれ大きく異なった特徴が見られます。例えば、よく日本で“純粋ユーカリプロポリス”などと宣伝されているのを見かけますが、そのような原塊は日本には来ていません。プロポリス原塊に起源植物のユーカリが多く混入すればするほど原塊の色調が黒くなり、100%に近いユーカリからの原塊は表面が真っ黒で、日本のプロポリス業界ではグリーンの原塊でなければ売り物にならないからです。誰がどのように決めたのか知りませんが、そのようなことから逆に言えば日本には“純粋ユーカリプロポリス”は無いと言えます。日本向けの色調がグリーンの原塊はユーカリが40~60%(ユーカリの品種にもよる)、その他は雑草木やハーブ類の混ざったものです。この雑草木で何が混ざるかによってグリーンの色調が決まります。そして、普通ユーカリは香り、他の草木は色を司り原塊が形成されていきますが、これも一概には言えず、地域によりこの逆も言えます。次に原塊の形状ですがこれも千差万別です。日本の業界ではかためのブロック状で大型ほど高級で高価とされ、業者によっては大型の原塊とそうでない物の画像まで撮り“当社プロポリス抽出液は特級品大型原塊使用”等と強調し宣伝しています。これもずいぶん変な事実です。
まず、大型のブロック状原塊は巣箱の入り口(巣門)付近に外敵の侵入防止などのために大量に塗り固められます。ここは巣箱内部にある原塊と違って常に太陽光線と外気にさらされる所で、飼育者が原塊を採取後、または新しい巣箱に取り替えたりした後、蜂が最初にプロポリスを付ける箇所です。常にその上に新しいプロポリスを付けていきますが、採取時点でこの箇所の原塊は巣箱内にある他所のものと比べ最も古く、太陽光線で変化、外気で風化、酸化など免れません。巣箱外壁に付着させた主に敵侵入防御目的の大型原塊に対し、巣箱内壁の殺菌消毒などの目的を有すものが小粒原塊であるように考えています。また巣箱内部は常に蜂によって一定の環境が保たれ、原塊にとっても非常に良い条件にあると言えます。私どもの意見としましてもこうした内部にある小粒原塊のほうが品質的に優れているというのが圧倒的です。
この2種の原塊を噛み比べてみても、後者の小粒原塊は咀嚼している内に全てが唾液中に溶け込み、口内に固形物が残りません。前者の大型原塊は唾液中の溶解速度が遅く、いつまでも固形物が残ることが多く、また、刺激・芳香・麻痺作用・清涼感・味などが小粒原塊と比べかなり劣ります。一言で言えば、大味で鋭さがありません。例えば巣内の群勢力が強力で環境に恵まれた所の一時期の原塊は、この様な咀嚼による方法でテストした後、原塊の持つ強烈な刺激と麻酔作用により一時的に声が出なくなることすらあります。これらのほとんどは、巣箱内部の特に蓋にあたる天上部分に付着させた小粒原塊に多く見られます。こうしたことから私どもの意見が、巣門や巣箱外部の隙間に詰められた外壁用の大型原塊と巣箱内部用の小型原塊では蜂が運んでくる樹脂の種類が違うという考え方と、同一だが付着させた巣箱の場所により原塊の成分に変化が起こるという二つに分かれます。これについては諸々の条件が重なり合い、非常に難解でよく分からないのが本音です。しかし、巣箱内部の方が原塊として優れているのだろうと経験的に言えるように思えます。
余談になりますが、私どもの同族会社で神奈川県平塚市にあります原液抽出メーカーのガラニージャパン日本支社があります。ここの製造担当者は開業以前よりプロポリスについての非常に熱心な研究家で、自宅車庫の一部を仕切り、研究室代わりに使っていました。ここは非常に狭く、しかも窓が全くなく、換気扇が一つあるだけの四面が完全に閉ざされた環境下にありました。
ここで原塊の粉砕から抽出まで幾多の研究に明け暮れる時期があったのですが、このような独房に近い環境下でありながら何時間でも研究に没頭でき、ストレスが溜まるどころか、外に出ようという気すら起こらず、疲れも全く感じなかったと言います。当時この狭い“研究室”は倉庫併用で、抽出液の備蓄とし開業へ向けての必要な数百kgの抽出用原塊が四面の棚に積み重ねられていました。この“研究室”の環境がプロポリスだけのことから考えれば、巣箱内の条件に共通していると思います。私どものオフィスに隣接する倉庫についても同じことが言え、原料屋として常に3t~4t程の輸入された原塊が置かれており、ここの寝椅子で疲れたとき仮眠をとるのが習慣ですが、非常にリラックスでき疲れがよくとれます。巣箱内には数万の蜂が生活していますが、一日中蜜を運ぶ働き蜂の休息の場として、狭い巣箱内のプロポリスが持つ役割はその意味合いだけでも大だと感じます。
さて、日本の業界で好まれる固いブロック状の原塊ですが、これは古い物の特徴です。本当に鮮度の良いものは、樹脂がまだ柔らかいため採取する段階でブロック状に剥がれず、例え剥がれたとしても採取後に塊と塊が癒着してしまいます。餅で例えるならば、つきたてと同じ団子状になり、日本で好まれるブロック状にはならず、また、これにへばり付いた木屑や蜂の死骸などをはじめ、様々な不純物は容易に除去できません。日本独特の形状重視という意味からも、新鮮でホットな柔らかい原塊は輸入されていません。プロポリス原塊は非常にデリケートな物質でその性質を知るには難解なことばかりです。例えば、巣箱周辺の植生、収集時の天候(みつばちがプロポリスを集めた時の)、採取の時期やその時の巣箱内みつばちの群勢、採取間隔(どのくらいの間プロポリスが巣箱内にあったか)、採取されたプロポリスの巣箱内の位置(巣箱の入り口・縦箱との隙間・ふた・巣枠・底板・隔王板など)、養蜂家の飼育方法、採取方法などこれらを指摘すればきりがないほどの条件下でプロポリス原塊が採取されます。
位置的にはブラジル国の中部高原で生産される原塊が日本向けに好んで送り出されています。この地域はブラジル全土のごく一部に過ぎませんが、日本の面積と比較すれば数倍はあります。この他にも至る所で養蜂が行われていますので、そこには副産物としての原塊は当然あります(前述のとおり、アマゾン地域の熱帯雨林での生産は僅少で質的にも劣り流通は皆無)。しかし、何故か日本ではこの地域内、特にミナスジェライス州のものが珍重されるようです。この地域のみブラジルで唯一良質な原塊の産地であるように思われているのか、国内で市販される製品には“ブラジル国ミナス州産”として大きく宣伝されているものを多く見かけます。こうしたことに対しても私ども原料を集荷する立場側として甚だ理解に苦しむところです。とにかくプロポリスの原料はブラジル産でミナスジェライス州に限るといった、まさに落語の“目黒のさんま”的発想には閉口させられます。多分、このことはたまたまミナスジェライス州産の原塊を我が国に持ちこんだ人物が“健康食品業界”では多少の影響力があったためなのか、それが以後定着化してしまったといったような根拠のないことだろうと思います。日本にはそうした自称“専門家”が多すぎ、我が品を売らんかなの言動がプロポリスに対する我が国の誤った固定概念として定着していき、あげくにその影響が日本の反対側の産地ブラジルにまで及んでいくことになります。
繰り返しになりますが、ブラジルは日本の23倍強もある日本と比較にならない程の大きな国です。そこでは多種多様のプロポリス原塊が生産されています。そしてそれぞれの地方により起源植物・気候・風土・飼育方法が異なり、大きくタイプ別に分けても100種類以上の原塊があり、これらのうちどのタイプが人間の健康に、より役立ち優れているかということになると非常に難解なテーマです。なにもミナスジェライス州産の原塊に限らず、その他の地域でも非常に香りが良くきわめて良質なものが採れます。しかし日本から来るバイヤーをはじめ、それに添う日本から現地に派遣された商社員は原塊に対する知識や経験の不足で、選別に対する自信が無く、兎にも角にも原塊はミナスジェライス州産でなければならないとなれば、今度は全く異なった問題が発生してきます。
それは彼らがミナスジェライス州に行き、現地で買い付けたはずの原塊や、現地の養蜂場より送られてきたものが全く他の地域のものであるという結果になり、それがそのまま日本に輸入され、誰も本当のことが分らないまま“ブラジルミナス州産原塊使用”と書き込まれたラベルの製品ができあがり、市販されることになります。ミナスジェライス州に運べば高値で日本人が買い取ることはブラジルの養蜂農家を徘徊する農産物ブローカーたちの儲け話の常識となっています。もっと極端な例を言えば、こうしたブローカーや大規模養蜂場の一部にはアルコール抽出後の原塊、つまり絞りカスを集め、その上から後述の原塊の粉をまぶして香りを付け、適度に乾燥させ、これらを原塊に混合し増量したり、その他、実に“いろいろな”ことをします。このような知恵?については日本人の想像を絶するもので、ラテンアメリカというところに住む人は生まれながらに持ち備えたとしか言いようのないほどのすさまじいものがあります。日本からやってきた輸入業者とその手助け役の5年や10年の滞在期間内で、現地の生活を保証された商社の駐在員をはじめ、例え南米移住何十年を自慢とする日系人や、その2世3世でさえも大多数が現地の日系社会という非常に狭い特殊な共同体で生きている限り、とても彼等の及ぶところではありません。逆説的に言えばそれが怖いゆえ、日系人の共同体が生まれたのでしょうが、こうした現地でのブラジル人との取り引きが完全に成就できるようになるまでは、何回も煮え湯を飲まされ、少しずつ覚えていき、やがてはどこに出ても渡り合える度量が備わり、初めて彼らと対等な立場で買い付けができ、その結果、納得のいく品質を妥当な価格で入手できるものです。
できることなら現地での原料調達はこうした彼等の数段上に立ち、何が真実かをはっきり見極める能力を持ち備え、売買の両者がお互い満足できる平等な取り引きができない限り、決して彼らとの長い友好関係と信頼関係を保つことはできません。そして、そうした結果大きなダメージを受けるか、または最後まで誰もそれに気付かず、結局、最終的には日本の消費者にしわ寄せが及ぶことになります。ラテンアメリカでの商取り引きは悲しいことに騙される方が悪いのですし、そうした判断の甘さがかえって日本人への信用をなくしています。そして“ブラジル人はとても信頼できない”という考え方に落ち着いてしまうのですが、それは現地人への理解不足でもあり、このような考えでは真の原料買い付けはとてもできません。結論として、原塊に対する買い付け人の知識やプロ意識が欠ければ“例のミナス州産”で採算が取れ、量さえまとまれば良しとする、いわゆる“商社のやる仕事”となります。それが今日、日本向けに送り出されているプロポリス原塊の実状と言わざるを得ませんし、こうした考えからはまともな原料を安定的に仕入れるのは不可能です。