肺炎と抗生剤・その2

(前回の続き)長女はエリスロマイシン投与後、まるで大潮から潮が引いたかのごとく急速に回復し、2日後にはいつもの元気な姿に戻っていた。そして長男、次女にも全く同じような症状が出始めたが、エリスロマイシンでぴたりと進行が止まった。私はこのときほど薬剤の有難さを味わったことはない。後日、学習するに従って少しずつ分かってきたのだが、結局のところ長女の感染症は医師の誤診?で、肺炎球菌などによる感染症として当時の第一選択薬だった βラクタム系抗生物質でセフェム系の初期に開発された薬を飲まされていたのではないかとの結論に達した。そして実際の起因菌は肺炎球菌ではなく、マイコプラズマによるものだったのだろうと今でも確信している。

マイコプラズマは非常に小さな細菌で細胞壁を持たないが、βラクタム系抗菌薬は細胞壁を作用点としているので、まったくと言ってもよいほど無効であることも分かった。マイコプラズマの抗菌薬としては、長女が利用したエリスロマイシンに代表されるマクロライド系抗生物質が第一選択薬であった。現在では多くのマクロライド系抗菌薬があるが、当時はエリスロマイシンが代表格だった。つまり私の会社のスタッフから聞いた薬が図星であったわけだ。ブラジルは社会保障なども決して裕福とは言い難く、医師の診断を受けることが経済的に容易とは言えない。一般的に健康を害したときは、街の薬局に相談して適宜薬を調達することが多い。薬局の主人やそのスタッフは、今どのような病気が流行っているか、それにはどの薬が奏効するかなどをよく知っている。皮肉なもので金を払って医者にかかった長女は誤診され、何日もガス交換が出来がたく苦しみ、顔色だけでなく唇や爪まで紫色になり、他方、薬局に相談したスタッフの子供はすぐ治ってしまった。(続く)

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